ガラスカップ


医工製カップの特徴

ここでは医工のガラスカップについてご説明いたします。

医工のガラスカップは熱に強い硬質ガラスを、熟練したガラス職人の手によってひとつひとつ製作しています。硬質ガラスは耐熱121度・加重限界121度のオートクレーブ滅菌にかけることができますので衛生的に使用できます。もちろん煮沸も可能です。

ガラスカップは非常に滑らかな肌触りが魅力です。古くから吸い玉・カッピングに携わっていらっしゃる先生方、またエステティシャンの先生に特に好んで使われています。

ガラスカップ

医工のガラスカップ

東京大学にほど近い東京都文京区の本郷三丁目に医工は所在します。

本郷は古くから多くの病院施設が隣接する地域で、医療機器の街として栄えました。その伝統は受け継がれ、今現在でも多くの医療機器関連会社があります。

プラスチック素材に主役の座を取って代わられる以前は、医療用具といえばガラス製品を指す時代がありました。注射器、点滴瓶などがそうです。こういった医療用具の多くは熟練した専門のガラス職人の手作業によって精巧に作られてきました。

ガラス職人と聞くと、多くの方は伝統工芸等に用いられる吹きガラスの技術を思い浮かべるかと思いますが、医療機器用ガラスはそれとは異なる特殊な技術により、専門の職人が加工・製作をします。

医工のガラスカップ製作中

まだ本郷にも多くの医療機器用ガラス職人が出入りしていた頃、その技術を誇るようにガラスで作られた人体の精緻な肺をショウウインドウに並べる店もあったと聞きます。現在では恐らく再現することのできない、まさに失われつつある昭和の技術です。

医工のガラスカップはそういった失われつつある昭和の技術を今現在に伝える職人の手によって作られています。すでにこの技術を持つ職人は少ないため、大量生産には向きません。また、大量生産品とは違い、職人の手によるガラスには、その証として気泡が入り込んだり、わずかに器具の痕が残ったりする場合があります。

しかし、医工では見た目よりも実用を重視しています。それはプロの方が施術の現場で使うことが大前提だからです。


ガラスの質

医工の手動・電動ポンプ用ガラスカップは、硬質ガラスにより、薄く軽く透明度の高いカップに仕上げています。これには技術と手間とコストが必要となりますが、そうした仕様にするには理由があります。

ここでは、主に医工の手動・ポンプ用ガラスカップと外国製火缶用のガラスカップとを比較して特徴について述べます。日本国内で現在流通しているガラスカップは主にこの2種類となるためです。

火缶用ガラスカップ

伝統的に吸い玉・カッピングの吸引には火が使われてきました。火を用いた吸い玉・カッピングを火缶と呼ぶことが多いようです。日本でも伝統的吸い玉は火缶によるものでしたので、今日でも伝統的方法を好む先生や、中国で吸い玉を学んだ先生の中には施術に取り入れている方もいらっしゃるかと思います。また、古くから電動ポンプを使っていらっしゃる先生方は、過去に火缶の勉強・習得をされている方も多いかと思います。

日本国内に流通している火缶に使用されるガラスカップは、主に外国製です。その中にはガラスが肉厚で重く、透明度が低いものがあります。こういった特徴は一見すると、丈夫で壊れにくそうといった良い印象に感じる方もいるようです。しかしながら、カップの重量は吸い玉・カッピングの施術に制限を与える場合があります。これはポンプ式でも火缶でも同様です。

重量

腹臥位、仰臥位での施術の場合、重いカップでもその重量が身体にかかるため、比較的はずれにくいのですが、側臥位、座位では吸着面が重力方向と直角になることが多いため、ある程度の吸引圧がないとカップがはずれやすくなります。腹臥位、仰臥位でも身体の側面を吸引させたい場合も同様です。そのため、極弱い吸引を施術者が求めたとしてもそれができず、吸引圧の選択に制限が加わることとなります。その自重によって特定部位での吸引自体が難しい場合もあります。

また、施術に向いた姿勢を求めても疾病等から特定の体勢を長く取ると痛みの出る方もいます。そのような場合も、上記の特徴から吸引圧の選択に制限が加わります。

ポンプ式の吸い玉・カッピングと違い、火缶による吸い玉・カッピングは吸引圧の微妙なコントロールがそもそも難しいのですが、さらに施術の幅を狭める可能性となりえます。医工の手動・電動ポンプ用ガラスカップは薄く軽いことに加え、ポンプによる自在な吸引圧のコントロールが可能なので、施術の幅を広げ、その可能性を大いに高めます。

ガラス透明度

ガラスの透明度は、施術箇所の微細な変化に対する目視による確認に影響を与えます。吸い玉・カッピングを行うと吸引中にカップ内が曇ることが多いので、透明度の低いカップは一層見えづらくなります。

温度変化への強度

薄く透明なガラスの製作には技術とコストがかかるため、外国製の火缶用ガラスカップは上記のような難点を持つものがあると思われます。くわえて、これらのカップの多くは、一般的な食器類と同様の材質である並ガラスにより製造されています。並ガラスは更なる問題点があります。

それは温度変化に弱いという点です。透明度が高いものであっても並ガラスならば同様です。

衛生管理が必要な現場で使われるガラス製品は、熱膨張に強い硬質ガラスによって製造されています。これは感染症等を防ぐため、熱による滅菌を行えるようにするためです。

医工製ガラスカップは硬質ガラスで製造されていますので、121℃(加重限界121℃)のオートクレーブ滅菌が可能です。また、カップ上部の逆止弁を備えたキャップ部分も熱に強いシリコンゴムとポリカーボネート製となっており、カップから取り外すことなくオートクレーブ滅菌に掛けることができます。

竹製・木製のカップ

ガラスカップ以前に使われて来た竹製カップや木製のカップは、ガラスカップよりも軽いものも多いのですが、使われる塗料によっては耐熱性能が低くオートクレーブ滅菌に不向きであったり、煮沸・洗浄を繰り返すことで清潔性能に劣化が起こったりすることがあります。また、なにより施術箇所が目視できないという弱点があります。歴史的に見ても、ガラスカップが主流となっていったのにはこうした理由があるのでしょう。

※硬質ガラスの「硬質」とは熱膨張に対して硬質という意味であり、物理的な衝撃に対して硬質という意味ではありません。通常のガラス同様に落下等では破損します。