スライドカッピング
スライドカッピングは、目黒彰布先生(日本吸角法研究会会長)が中国の吸玉の走缶法にヒントを得て皮膚に跡のつかない吸玉法として工夫発展させた施術方法です。
目黒先生により美容へのアプローチも提唱されたため、エステティックサロン等の需要が新たに創出されました。目黒先生に師事し、当時日本吸角法研究会東京本部として講習会等の活動をしておりました医工相談室長が、先生とともにより使いやすい器具の開発を行い、現在の形状となりました。
当初は美容に対する新たな施術方法として注目されてきたスライドカッピングでしたので、エステサロンの先生方に多く使われてきました。しかし現在に至ってはエステサロンの先生方のみならず、お医者様や按摩・鍼灸・柔道整復の先生方、整体の先生方、その他様々な専門家の先生方にご使用いただく機会が増えました。これは走缶法からヒントを得たスライドカッピングが、元来の方法としても再発見されつつあると言えるのかもしれません。
今後もスライドカッピングの可能性を一層広げるために、先生方のより多くのご意見をお待ちしております。





走缶法とスライドカッピング
走缶法とは元々、吸玉の技術のひとつとして中国で行われてきたものです ※。
吸引に火を使う走缶法は、基本的にはカップを吸引し肌の上を滑らすたびに空気がカップ内に侵入しますので、火をカップに入れては滑らし入れては滑らしを繰り返すことになります。身体の近くで常時火を扱うため、やはりリスクを考慮しなくてはなりません。また、吸引圧の微妙なコントロールができず、施術方法もかなり限定せざるを得ないものでした。
そこで開発されたのが電動式ポンプとスライドカッピング用カップ「ビューティーカップ」による持続吸引法です。
スライドカッピング用カップ「ビューティーカップ」は通常のカップと異なり、シリコンキャップ(逆止弁)を取り付けていません。そのかわりに圧力調節口が開けられており、調節口のふさぎ方を指で調節することにより自在にカップ内の吸引力を調整することができます。
※カッピングは世界各地で広く行われてきた施術法であり、中国で走缶法と呼ばれる方法とは別の系統であるものの、似た施術が行われてきた可能性はあります。他の地域の書籍で走缶法と同じアプローチではないかと思しき記述があるものもあります。ここでは「スライドカッピング」として開発した施術法の直接的なヒントとなった、中国の走缶法について述べています。
テクニック
最初に
本格的な使用のためのテクニックには、一定のトレーニングを必要とします。
しかし、簡単にスライド法を行う方法もあります。
- 電動ポンプ(カッピングα-II以上のポンプ)の圧力調節バルブを操作し、-20kpa程度の吸引圧に設定する。
- 施術部位にオイルなどを塗る。
- 施術部位にあったサイズのガラスカップを施術面にあて、カップの穴を指で塞ぎその状態で吸引を確かめて任意の方向に滑らせる。
- 目的の部位に到達したら、塞いでいた穴を開きカップを皮膚面から離す。
- 1~4を繰り返す。
その他のテクニック
・WAVE吸引
- カップの穴を指で塞ぎ、目標の吸引圧力まで吸引する。
- 目標の吸引圧力に到達したら、カップの穴を開きカップ内の圧力を下げる。
- 1~2を必要に応じて繰り返す。
- 部位を替えて1~3を行う。
・弾発法(目黒先生命名)
- カップの穴を指で塞ぎ、目標の吸引圧力まで吸引する。
- 目標の吸引圧力に到達したら、カップの穴を塞いだまま皮膚から一気に引きはがす(ポンと音をさせるように)。
指の使い方
部位や、皮膚面・筋肉・骨格の微妙な変化に応じて速やかなコントロールを行うといった高度なテクニックを駆使するためには、カップ内の圧力を微妙にコントロールする必要があります。
このようなテクニックを獲得するためには、個人差はありますが、一日30分程度の練習量であれば約1週間である程度できるようになります。 あとは実践で上達していくことが一番良いです。テクニックの基本はカップの穴の塞ぎ方です。
練習方法
- カップの穴を完全に塞ぐ(写真1)。
- 手の大きさ、指の形状、関節のしなやかさ等の条件で指の使い方も相違が出てきますが、圧力コントロールのために塞いでいる指を上部にずらす方法が一般的です。
- 横に指をずらす方法写真(写真2、3)。この時、指は小指側に向かって転がすようにすることで微妙な調節ができます。親指側にずらしても良いです。
- 吸引力を強(最大)にして、自分の皮膚で繰り返し圧力調節の練習をしてください。
- 利き手以外で施術しなければならない時もあります。左右両手ともできるようにします。
- 圧力コントロールに自信がついたら、皮膚面を滑らしながらコントロールします。指の使い方は、使いやすい方法で行ってください。



実際にやってみましょう(1)
- 外側の足首の上から膝付近の骨の手前までスライドさせます。下から上に弱い吸引圧から少しずつ吸引圧力を強めながら(カップの穴を少しずつ狭めながら)、スライドさせます。圧力調節バルブを調節して最大で-40位になるようにしてください。
- 次に膝外側の骨の上を越えて大腿部の外側まで続けてゆっくりスライドさせます。この際に骨の上は吸引圧を下げて滑らかに超えていきます。吸着しない場合は滑らせるだけでよいです。
- カップを皮膚から外すときは、カップの穴を完全に解放します。
- 最初はボディー用カップ小で行います。
- 吸引圧は、できるだけ弱いところからやや強く感じるところまでを繰り返しスライドさせながら練習してください。
- 慣れたら調節バルブ・圧力コントローラーを強にして練習してください。
実際にやってみましょう(2)
- ボディー用カップ小をセットしてください。
- 圧力コントロールは強にしてください。
- 後頭部の生え際から肩にかけてオイルなどを塗ってください。
- 後頭部の生え際にカップをあて、カップの穴を塞ぎ痛くない程度に強く吸引します。
- カップの指をずらして圧力を弱めて首から肩にかけてゆっくりスライドさせていきます。4~5を3~5回繰り返します。
- スライドさせる速度は眠くなるほどゆっくりが基本です。 以上を気持ちよくできればテクニック的には実践できる腕前です。